【自社製品紹介・開発ストーリー】WORK SIGNALと同じ運営元が開発したMac文字起こしアプリ「KIKINAO」。AIとの対話から試作・検証・販売まで、個人開発の実際と課題を振り返る。
30秒でわかる / THE SIGNAL
本記事はWORK SIGNALと同じ運営元のアンバーライト合同会社が開発・販売するKIKINAO Transcriberの開発ストーリーです。独立した第三者による製品レビューではありません。通常ニュースのSIGNAL SCOREは付けていません。
「アプリを作りたい」が、現実になる時代
「こんなアプリがあれば便利なのに」。仕事をしていると、そう感じる瞬間がある。しかし、これまではアイデアがあってもプログラミングの専門知識や開発費用が大きな壁になっていた。その状況が生成AIによって変わり始めている。2026年10月15日、アンバーライト合同会社はMac向け文字起こしアプリ「KIKINAO Transcriber(キキナオ)」を発売した。開発の出発点は、プログラミングの専門知識がなかった一人の会社員が、日々の仕事で感じた不便だった。AIとの対話を重ね、実際にアプリを動かし、問題を修正しながら商品化にたどり着いた。ただし、その道のりは「AIにお願いしたら完成した」というものではなかった。
文字起こしは便利になった。でも、仕事は終わらない
会議やインタビューを録音し、AIで文字起こしする。以前と比べて、ずっと身近になった作業だ。しかし文字起こしが終わっても、その文章をそのまま使えるとは限らない。人名や会社名が間違っている。数字や金額が正しいか分からない。聞き取りづらい一文をもう一度確認したい。そのたびに音声プレーヤーへ戻り、該当する位置を探し、文章に戻って修正する。KIKINAOが着目したのは、この「文字起こしの後に残る仕事」だった。目指したのはすべてをAIに任せることではない。AIが文字にし、人間が必要なところを確かめ、使える記録として仕上げる。その作業を一つのアプリで完結させることだった。
AIとの対話から、アプリの形を作る
開発ではAIとの対話を通じて必要な機能を整理し、試作と修正を繰り返した。例えば文字起こしされた文章の一行を選び、該当する音声を聞き直す機能。選択した言葉を修正し、同じ言葉にも反映する機能。数字や金額、日時などを確認候補として表示する機能。こうした仕組みを少しずつ形にしていった。ただし画面に機能が表示されたからといって完成とは言えない。実際に使ってみると、日本語入力中の表示や、選択した言葉の扱い、確認済みの行から次の行への移動など、細かな不便が見つかった。AIが提案したコードを動かし、問題を確認し、修正を依頼し、再び検証する。この繰り返しが必要だった。
難しかったのは、動くものを「商品」にすること
個人開発で見落としやすいのは、アプリが動くことと、安心して使える商品になることは違うという点だ。KIKINAOの開発でも文字起こし機能以外に多くの作業があった。保存したファイルを再び開けるか。編集内容が正しく残るか。書き出したファイルが用途に合っているか。初めて使う人が操作を理解できるか。購入した人がライセンスを認証できるか。困ったときの案内や問い合わせ先はあるか。商品化にあたっては、同梱ソフトウェアのライセンス表示や、初回起動の注意事項、購入・問い合わせの導線も整備した。AIは開発を支援できる。しかし「この状態で利用者に届けてよいか」を判断する責任は開発者に残る。これはAIを仕事に導入する企業にも通じる考え方ではないだろうか。
KIKINAOは何ができるのか
KIKINAOはApple Silicon搭載Mac向けの文字起こし・聞き直し校正アプリだ。大きな特徴は三つある。一つ目は気になる行を選んで、その場で聞き直せること。文字起こしされた文章と音声を行き来しながら必要な箇所を確認できる。二つ目は人名や専門用語、数字などの確認を支援すること。言葉の修正や補正ルールの登録に対応し、数字・金額・日時などを確認候補として表示する。ただし数字の正誤を自動で判定するわけではない。三つ目は音声と編集内容をまとめて保存できること。専用のKIKINAOファイルに保存すれば、後日、音声を聞き直しながら編集を再開できる。書き出しはTXT、DOCX、JSON、Markdown、CSV、SRT、VTTに対応している。会議記録、インタビュー原稿、字幕データなど用途に合わせて使える設計だ。
大切な音声を、外部の文字起こしサービスへ送らない
もう一つ重視したのが音声データの扱いだ。会議やインタビューの録音には個人情報や公開前の情報が含まれることもある。KIKINAOでは音声認識を利用者自身のMac内で実行する。文字起こしのために音声や本文を外部の認識サービスへ送信する必要はない。ただしすべての機能が完全オフラインで動作するわけではない。初回の認識モデル取得や購入ライセンスの認証にはインターネット接続が必要だ。また音声と編集内容をまとめたKIKINAOファイルは暗号化されない。機密性の高い記録を保存・共有する場合は利用者自身による適切な管理が必要になる。
できないことも、明確にする
KIKINAOはあらゆる文字起こし作業に対応する万能なアプリではない。現行版には自動要約、話者の自動識別、複数音声ファイルの一括文字起こし機能はない。また他社製品より認識精度や処理速度が優れていることを示す比較試験も実施していない。現行版はApple Silicon搭載Mac(M1以降)、macOS 14以降が対象で、Intel MacとWindowsには対応していない。さらにAppleのDeveloper ID署名・公証は未実施のため、初回起動時にmacOSの警告が表示される場合がある。購入前には公式サイトの注意事項を確認し、無料体験版で実際の動作を確かめることを推奨している。
AIが変えるのは、開発のスピードだけではない
ここからはWORK SIGNALの考察だ。KIKINAOの開発経験から考えたいのは、AIによって「誰がものづくりに参加できるか」が変わり始めていることだ。従来ソフトウェア開発には専門的な技術を習得するか、開発を外部へ依頼する必要があった。もちろん今でも高度な開発には専門知識が不可欠だ。しかしAIを活用することで、技術者ではなかった人が自分の課題を出発点に試作品を作ることは以前より現実的になっている。一方、AIがコードを生成できても、利用者の不便を見つけること、品質を確認すること、販売条件を整えること、問い合わせに対応することまで自動的に解決するわけではない。むしろ技術的な制作のハードルが下がるほど「何を作るのか」「誰のために作るのか」「どこまで責任を持つのか」という判断の重要性が高まるのではないだろうか。
小さな不便から、新しい仕事が生まれる
KIKINAOは大きな市場を最初から狙って生まれた製品ではない。出発点は文字起こしの後に残る、少し面倒な作業だった。AIによってそうした身近な課題を自分で解決する選択肢が広がっている。もちろんアプリを作れたことと、事業として成功することは別だ。使い続けてもらえるか。対価を払う価値があるか。改善を継続できるか。本当の評価はこれから利用者の手に渡る中で決まっていく。AIはアイデアを形にする手段を増やしてくれる。しかし価値を生み出すためには、人間が課題に向き合い、確かめ、責任を持つ必要がある。KIKINAOの開発はその一つの実例だ。
製品情報・無料体験
KIKINAO Transcriberは2026年10月15日発売。早期購入価格は3,980円(税別)の買い切り、初回起動から7日間の無料体験があり自動課金はない。対応環境はApple Silicon搭載Mac、macOS 14以降。開発・販売はアンバーライト合同会社。最新の価格・対応環境・注意事項は公式サイトを確認してほしい。
公式サイト・無料体験:https://kikinao.amberlight.co.jp/
7日間無料体験:https://amberlightjapan.gumroad.com/l/kikinao-trial
製品発表:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000004.000167574.html