日本銀行の2026年10月金融システムレポートは、住宅価格の上昇と借入額の大口化を背景に、35年超の超長期住宅ローンが増加していると指摘。35年・40年返済の試算から、月々の負担と総返済額の違いを解説する。
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日銀は10月23日の金融システムレポートで、住宅価格上昇に伴う借入額の大口化と35年超ローンの利用増加を指摘した。毎月の支払いを抑えても総返済額や退職後の負担が軽くなるとは限らない。
住宅ローンの『35年』が当たり前ではなくなっている
住宅ローンの返済期間は35年が一つの目安とされてきた。しかし住宅価格の上昇を背景に、35年を超えるローンを選ぶ動きが広がっている。日本銀行が2026年10月23日に公表した金融システムレポートは、住宅ローンの大口化と超長期化を取り上げ、利用者への十分な説明と金融機関の丁寧なリスク管理が必要だと指摘した。
日銀が示した背景は、住宅価格の上昇と借入額の大口化
日銀によると、住宅ローンの大部分を占める変動金利型では適用金利が上昇している。一方、賃金上昇など雇用所得環境の改善は返済負担を和らげる方向に働いている。ただし、物件価格の上昇を主因にローンの借入額が大きくなり、毎月の返済額を一定の範囲に抑えるため、35年超の超長期ローンの利用が増加している。
日銀は、35年超のローンを一律に危険と断定していない。返済期間中に家計の返済能力が変化し得ることを踏まえ、金融機関に説明とリスク管理を求めている。
35年と40年、毎月の返済額と総額はどう変わる?
返済期間の影響を確認するため、借入4,000万円、年1.5%の固定金利、元利均等返済、ボーナス返済なし、諸費用なしという同一条件で試算した。
35年返済では、毎月約12万2,474円、総返済額約5,144万円、利息約1,144万円。40年返済では、毎月約11万869円、総返済額約5,322万円、利息約1,322万円となる。
40年に延ばすと毎月の返済額は約1万1,605円下がるが、総返済額は約178万円増える。これは金利を全期間一定とした例示であり、実際の変動金利ローンでは将来の金利や返済条件によって結果が変わる。
金利上昇と賃金上昇は、家計に一律には作用しない
賃金が増えれば返済に使える所得が増える可能性がある一方、物価や教育費などの支出も変化する。変動金利ローンでは金利上昇による影響を受ける場合があり、金融機関ごとの返済額見直しルールも異なる。日銀の家計全体についての評価を、個々の世帯が安心できるという意味に読み替えることはできない。
住宅ローンを比較するときは、現在の返済額だけでなく、金利が上がった場合や収入が減った場合の支払い余力も確認したい。
退職後まで返済が続くときに考えたいこと
40年ローンを35歳で組めば、完済予定は75歳になる。返済期間を長くすることは、購入時点の月額負担を抑える一方、退職や転職、子どもの教育費、介護など、将来の家計変化と重なる期間を長くする。
繰り上げ返済を選べる場合でも、その資金を確実に用意できるとは限らない。住宅購入時は、年齢、働き方、家計の予備資金、老後の収入見通しを含めて検討する必要がある。
WORK SIGNALの視点|『今月払える』と『最後まで返せる』は違う
ここからは編集部の考察だ。返済期間を延ばすこと自体は、家計の柔軟性を確保する一つの方法になり得る。ただし、月々の支払いが小さく見えることと、住宅取得の総負担が小さくなることは同じではない。
比較したいのは、①毎月返済額、②総返済額、③金利変動時の余力、④退職後に残る残債、⑤住まいの維持費の五つだ。金融機関の説明を受け、複数の条件で試算することが、納得できる選択につながる。
一次情報
日本銀行『金融システムレポート(2026年10月号)』2026年10月23日公表:https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/fsr261023.htm 該当箇所:『企業・家計の信用コスト』内の家計部門、図表I-6。