国際決済銀行(BIS)が10月28日に公開した中央銀行等のAI導入調査では、回答機関が報告したAI案件の本番運用比率が2024年の約半分から2026年は3分の2超に増えました。一方、AI利用ルールの遵守監視能力を「高水準」と答えたのは4%。導入の広がりと、運用管理の難しさが同時に見えてきます。
30秒でわかる / THE SIGNAL
国際決済銀行(BIS)が10月28日に公開した中央銀行等のAI導入調査では、回答機関が報告したAI案件の本番運用比率が2024年の約半分から2026年は3分の2超に増えました。一方、AI利用ルールの遵守監視能力を「高水準」と答えたのは4%。導入の広がりと、運用管理の難しさが同時に見えてきます。
AIを「試す」から「業務で使う」へ
生成AIを業務に取り入れる組織が増えるなか、重要なのは利用者数だけではありません。実際の業務に組み込まれ、継続して使われているか。その状態を安全に管理できているかです。
2026年10月28日、国際決済銀行(BIS)は、傘下のアービング・フィッシャー中央銀行統計委員会(IFC)が実施した「AI readiness in central banks」を公表しました。回答先一覧には日本を含む65の国・地域・機関が記載されています。
報告書によると、回答先が報告したAI案件のうち、本番運用に入った割合は2024年の約半分から2026年には3分の2超へ上昇しました。ここには小規模な本番運用も含まれます。すべての中央銀行でAIが全面導入されたという意味ではありません。
利用ルールを作っても、守られているかの確認は難しい
AIの利用ルールや推奨事項を整える中央銀行は増えています。ところが、利用ルールの遵守状況を監視する能力について、2026年調査で「高い(High)」と回答した割合は4%にとどまりました。
同じ図表では「中程度(Moderate)」54%、「整備中(Developing)」27%、「限定的(Limited)」15%です。これは事故が起きた割合ではなく、監視能力に関する各機関の自己評価です。
AIの導入と管理の成熟度は、必ずしも同じ速度では進まないことを示唆します。導入を急ぐ組織ほど、利用ルールだけでなく、実際の利用状況を確認する仕組みも必要になります。
コストとデータ整備も重要な課題
報告書は、IT支出をAI導入のリスクとして挙げる回答先が約8割に達したと説明しています。計算資源、クラウド、既存システムとの接続、ライセンス、セキュリティ対策などが負担になり得ます。
また、AIを活用するには、社内データが利用可能で、機械が読み取れ、適切に保護されていることも重要です。回答先の38%は組織全体のAI対応戦略を導入済み、31%は草案を作成中と報告しました。
AIツールの契約だけでなく、データ、権限、運用体制を整える取り組みが進んでいます。
管理職が自社で確認したい3つの問い
ここからは編集部の考察です。中央銀行の調査結果を民間企業にそのまま当てはめることはできませんが、確認すべき観点は参考になります。
一つ目は、試験利用と本番利用を分けて把握できているか。二つ目は、AIに入力できる情報や実行できる操作を定め、その遵守状況を確認できるか。三つ目は、運用コストと成果を継続的に測定できるか、です。
例えば社内文書の要約なら、入力情報の範囲と確認責任者を決める。顧客情報の更新まで任せるなら、承認・権限・操作ログをさらに厳密に設計する。業務のリスクに応じて管理の深さを変えることが重要です。
数字を読む際の限界
今回の調査は中央銀行等の自己申告であり、対象業務や組織規模は一般企業と異なります。また2024年と2026年の回答先構成は完全には一致しません。
それでも、AIの活用が進むほど「導入できたか」だけでは十分でなくなるという問いを投げかけています。現場で使える仕組みと、安心して使い続けられる管理体制。その両方を育てることが、次のAI活用の課題になりそうです。