SAPは2026年10月27日、企業向けAI開発環境「Joule Studio」などの機能拡張を発表した。70を超えるAIモデルの選択肢に加え、社内外のAIエージェントをつなぐ仕組みと、権限・利用状況・監査を管理する機能を打ち出した。業務AIの導入で、機能だけでなく運用責任をどう設計するかが問われる。
30秒でわかる / THE SIGNAL
SAPは2026年10月27日、企業向けAI開発環境「Joule Studio」などの機能拡張を発表した。70を超えるAIモデルの選択肢に加え、社内外のAIエージェントをつなぐ仕組みと、権限・利用状況・監査を管理する機能を打ち出した。業務AIの導入で、機能だけでなく運用責任をどう設計するかが問われる。
AIが「答える」だけでなく、業務を進めるための基盤
企業のAI活用が広がるにつれ、チャットで情報を整理するだけでなく、複数のシステムをまたいで業務を進める使い方が注目されている。
SAPは10月27日、年次開発者イベントSAP TechEdで、Joule Studio、Joule Work、SAP Business AI Platformの新機能を発表した。経理、人事、調達などの企業システムとAIエージェントを結び、業務の流れを支援することを目指す。
70超のモデルから選ぶ。開発者だけの仕組みではない
SAPの説明によると、Joule Studioでは70を超えるAIモデルを選択できる。プログラムを書かずに作るノーコードと、コードを使った開発の双方に対応する。
また、ワークフロー自動化ツールn8nとの連携を進め、先行利用プログラムの顧客はJoule Studio内でワークフローを設計・実行できる。ただし、一般向けの広範な提供は今後とされる。導入を検討する企業は、自社の契約・利用条件を確認する必要がある。
他社のAIも連携。そこで重要になる権限と監査
新しいJoule Workでは、MCPやA2Aといった連携規格を活用し、複数のAIエージェントが業務を進める仕組みを拡充する方針だ。
第三者のAIエージェントがSAPのJoule Agentsを呼び出す際にも、管理されたゲートウェイを通してアクセス制御を行う設計を掲げる。さらに新しいSAP Enterprise AI Gatewayは、認証、ルール適用、監視、利用状況の追跡、監査を一元管理する構想だ。
AIが会社のシステムにアクセスできるほど、「誰が何を許可したか」「どこまで変更できるか」「何が実行されたか」を確認できることが重要になる。
管理職が導入前に決めたいこと
ここからは編集部の考察である。
第一に、AIが扱う業務と、実行してよい操作を分けること。情報の検索・要約と、顧客情報の変更・支払いの確定では必要な権限が違う。
第二に、AIエージェントの責任者と、例外時に人が判断する手順を決めること。第三に、操作記録を確認し、不要な権限を定期的に見直すことだ。
新しいツールを導入する際には「何を自動化できるか」とともに「誰が止められるか」を設計したい。
発表と一般提供は分けて読む
今回の発表には、今後の提供を予定する機能が含まれる。SAPはJoule Studioの対象顧客向け実行環境について2026年12月までの期間限定無料措置を説明しているが、すべての企業に同じ条件が適用されるわけではない。
また、製品発表だけで導入後の時間削減や費用対効果が証明されたわけではない。業務AIを広げる際は、実際の提供条件と自社の効果測定を確認したい。