英バークレイズが2026年中に約5,000人の人員削減を見込む。第3四半期利益が増える一方で、長年の技術投資やAI活用、組織簡素化を背景に人員配置を見直す動きから、AI時代の雇用とマネジメントを考える。
30秒でわかる / THE SIGNAL
バークレイズは2026年に約5,000人(従業員の約5%)の人員削減を見込み、うち約1,000人は削減済み。2026年第3四半期の税引前利益は23億ポンドで前年同期比12%増。背景には技術投資・組織簡素化・AI活用があり、5,000人全員がAIによる削減とは言えない。
AIによって仕事が効率化された、その先に何が起きる?
AIを使えば、これまで時間のかかっていた仕事を短時間で終えられる。文章作成、データ分析、プログラミング、問い合わせ対応。さまざまな業務で、AIによる効率化が進んでいる。では、企業全体でAIの活用が広がったとき、働く人の仕事はどう変わるのだろうか。2026年10月22日、英国の大手銀行バークレイズが発表した決算には、その変化を考えるうえで重要な情報があった。同社は、技術活用による効率化と組織の見直しを進め、2026年中に約5,000人の人員削減を見込んでいる。全従業員の約5%に相当する規模だ。約1,000人はすでに削減され、残りは年末までに削減する見通しと説明している。
利益が増えていても、人員配置は変わる
バークレイズの2026年第3四半期の税引前利益は、前年同期比12%増の約23億ポンドだった。業績が悪化しているから人員を減らす、という単純な話ではない。企業として利益を生み出しながら、同時に仕事の進め方と必要な人員を見直している。削減対象には業務支援部門や開発関連の職種も含まれるという。背景にあるのは、長年の技術投資、業務プロセスの簡素化、そしてAIによる生産性向上だ。バークレイズの経営陣は、AIだけが今回の人員削減の原因ではないと説明している。AIによって5,000人の仕事が直接なくなった、と捉えるのは正確ではない。
AIの導入が進むと、企業には新しい選択肢が生まれる
これまで、企業が成長するためには、人員を増やす必要がある場面が多くあった。事業が拡大すれば事務処理も増える。顧客が増えれば問い合わせ対応も増える。新しいシステムを開発するには開発者を増やす。しかしAIが業務を支援するようになると、必ずしも同じ人数の増員が必要とは限らなくなる。そこで重要になるのが、効率化によって生まれた余力をどう使うかという経営判断だ。人員を削減する企業もあれば、新しい事業に人材を振り向ける企業もあるだろう。AIを導入した後の人材戦略こそ、企業の姿勢が表れる部分なのかもしれない。
管理職に求められるのは、人を減らす判断だけではない
今回のニュースは、日本企業の管理職にとっても無関係ではない。AIによって一部の仕事が効率化されたとき、現場では新しい課題が生まれる。これまでその仕事を担当していた人の役割をどう変えるのか。若手社員は、何を通じて経験を積むのか。新しい仕事に必要なスキルを、誰がどのように教えるのか。単に業務量を減らすだけでは、こうした課題は解決しない。むしろ、AIが作業を担うようになるほど、人間が判断し、学び、協力する機会を意識的につくる必要がある。
WORK SIGNALの視点:AI時代の生産性を、何のために高めるのか
AIの普及によって、企業の生産性は今後さらに変わっていく可能性がある。しかし、生産性が向上することと、働く人の暮らしが豊かになることは、必ずしも同じではない。効率化によって生まれた時間や利益を、どこに振り向けるのか。従業員の育成に使うのか。新しい事業を生み出すために使うのか。働く人の負担を減らすために使うのか。今回のバークレイズの発表は、AIの性能そのものよりも、その成果を企業がどう活用するのかという問いを投げかけている。AIが仕事を変える時代だからこそ、人をどう育て、どう生かすかという経営の判断が、これまで以上に重要になるのではないだろうか。
一次情報:Barclays PLC 2026年第3四半期決算 https://www.investegate.co.uk/announcement/rns/barclays--barc/3rd-quarter-results/9835199 経営陣発言・人員削減規模の照合:Reuters https://www.reuters.com/business/finance/barclays-q3-profit-rises-12-announces-670-million-buyback-2026-10-22/