厚生労働省の2026年10月23日の労働政策審議会で、裁量労働制の対象業務や健康確保措置を議論。労使の見解が分かれる中、制度拡大が決まったわけではない。AI時代の成果評価と働く人の健康を考える。
30秒でわかる / THE SIGNAL
裁量労働制の対象業務や長時間労働防止が審議会の論点に。制度拡大や法改正は未決定。柔軟な働き方と健康確保をどう両立するかが焦点だ。
働く時間より、仕事の進め方を重視する制度
2026年10月23日、厚生労働省の第213回労働政策審議会労働条件分科会で、裁量労働制の見直しが議題となった。裁量労働制は、法律で定められた対象業務について、労使で決めた時間を働いたものとみなす制度だ。仕事の進め方や時間配分に裁量があることが前提で、対象業務は限定されている。今回の審議で対象拡大が決定したわけではない。
使用者側は柔軟化を求め、労働者側は慎重
審議会資料には、対象業務と対象外業務を兼務する場合にも実態に応じた適用を求める使用者側の意見や、制度拡充による長時間労働・健康被害を懸念する労働者側の意見が整理されている。使用者側は柔軟な働き方や成果に応じた処遇の可能性を重視する一方、労働者側は2024年4月施行の改正制度の適正運用を優先すべきだと主張している。これは双方の意見であり、政府が拡大を決めたことを意味しない。
「裁量があること」と「長時間働くこと」は違う
制度上、仕事の進め方を本人に委ねても、業務量や納期を実際に調整できなければ自由な働き方とは言い難い。長時間労働を防ぐ仕組み、健康状態の把握、適切な処遇をセットで考える必要がある。働いたとみなす時間と、実際の労働時間は同じとは限らないため、健康確保の観点から実態把握が重要になる。
AIが仕事を変えるなら、評価も変わる?
ここからはWORK SIGNALの考察だ。AIで情報整理や資料作成が速くなれば、投入時間だけで成果を測りにくい場面が増えるかもしれない。しかしAIによる効率化と裁量労働制の対象拡大の是非は別問題だ。成果に応じた評価は裁量労働制を導入しなくても検討できる。効率化で生まれた時間に業務を追加し続ければ、負担が増す可能性もある。
管理職が今から考えたいこと
今回の審議を受けて直ちに社内制度を変更する必要はない。まずは社員が仕事の順序や進め方を自分で決められるか、業務量が一部の人に集中していないか、効率よく成果を出した人が適切に評価されているかを確認したい。制度の名前だけでなく、現場で実際に裁量が確保されているかが重要だ。
WORK SIGNALの視点:自由な働き方には健康を守る仕組みも必要
柔軟に働けることは魅力だが、責任感の強い人ほど長時間働き続けることもある。だからこそ自由な働き方と健康管理はセットで考えたい。AIによる効率化が進む時代、より多くの成果だけを求めるのではなく、無理なく働き続けられる環境づくりが欠かせない。今回の審議は制度の検討段階であり、今後の議論を継続して確認する必要がある。